県南部で急増し、農作物や花を食い荒らすシカ科の特定外来生物「キョン」の獣害対策に県が本腰を入れ始めた。いまだ謎が多い生態を解明するために捕まえたキョンにGPS装置を付けて追跡調査を行うほか、捕獲担当の任期付き専門職員の募集も始めている。14年間で約50倍と爆発的に頭数が増えたキョンによる被害の根絶に向け、効果的な一手となるか注目される。
県自然保護課などによると、キョンは勝浦市にあったレジャー施設「行川アイランド」(平成13年閉鎖)が輸入したが、飼育されていた個体の一部が脱走し野生化したとみられる。閉鎖直後の推定頭数は14年度が1千頭だったが、19年度3400頭、27年度末には4万9500頭に。県のほか生息地のいすみ市や鴨川市、勝浦市などが罠を仕掛けるといった方法で駆除しているが、28年度の捕獲数は計2400頭で、増加を食い止めきれない。
同課は急増の理由を「熊やオオカミのような天敵となる肉食獣がいないうえ、房総半島は温暖で餌も多いため」と分析。加えて、キョンの驚異的な繁殖力も問題となっている。キョンの雌は生後半年ほどで妊娠でき、出産直後から発情期となるなど特定の繁殖期を持たず、1年を通して繁殖可能。2歳前後からしか妊娠や出産ができない同じシカ科のニホンジカなどに比べ、旺盛な繁殖力を持つ。
頭数増加に伴い、山間部から畑や住宅地などへの侵入も目立つ。県環境政策課によると、「花壇の花が食べられた」「夜中の鳴き声がうるさい」といった住民からの苦情も増えている。キョンによる農作物などの食害額も28年度は130万円相当にのぼった。
県はこれまでも捕獲に努めてきたが、より効果をあげるため、昨年12月から捕えた雌のキョンにGPSを付けて放し、行動や移動経路の調査を始めた。更に捕獲担当の専門家1人を、今年4月から3年間の任期付き職員として募集中。特定外来生物の駆除を担う専門職員の採用は「カミツキガメ」に次いで2例目。いすみ市では捕えたキョンの皮革商品の開発に力を入れるなど、駆除だけでなく活用への動きも出てきている。
同じく野生化による被害に悩む東京都の伊豆大島では、キョンの生息数が島民を大きく上回るほどになっり、特産物のアシタバなどの食害、自動車との衝突事故が問題となっている。県自然保護課の担当者は「調査で生態を把握し、今度こそ根絶に向けた取り組みを進めたい」と話している。
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【用語解説】キョン
中国南部や台湾原産のシカ科の動物。成獣は体長約70センチ、体高約40〜50センチ、体重は約10キロとニホンジカなどに比べて小さい。本県南部と東京都の伊豆大島で飼育されていた個体が逃げ出し野生化した。繁殖力が強く、農作物などの食害をもたらす。人の活動の影響で本来の生息地域から入り込み、在来の生き物を捕食するなど生態系に害を及ぼす「特定外来生物」の一つに法律で指定されている。
Posted by jun at 2018年01月31日 16:25 in 外来生物問題