いま、世間を騒がせている特定外来生物・ヒアリ。噛まれると命の危険もある恐ろしいアリですが、我々の生活に悪影響を与えるのは、ヒアリだけではありません。全国で桃や桜の木を食い尽くす外来生物の昆虫が大繁殖しています。一体どんな虫なんでしょうか?
梅干のようにしぼんでしまった桃
徳島県北部にある板野町。甘くてみずみずしい桃の産地として知られるこの小さな町で、いま大きな異変が起きています。梅干しのような無残な姿になってしまった桃。出荷最盛期にもかかわらず、実がしぼんでしまって500円玉ほどの大きさしかありません。
「悲しい、せっかく植えたのにね」(桃農家)
一体なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか?
木の幹をよく見てみると…犯人はこの赤い首が特徴的な「クビアカツヤカミキリ」。中国からやってきた外来種です。板野町でクビアカツヤカミキリがはじめて見つかったのは2015年の夏。それからたった2年で被害がみるみるうちに広がり、いまでは町内のほとんどの農家が大きな打撃を受けているといいます。
厄介なのは幼虫
中でも特に厄介なのは…クビアカツヤカミキリの幼虫です。
「木が根っこから上に栄養を運ぶ道管とか維管束と呼ばれる、そういったところを(幼虫は)食べるので、上に栄養が運ばれなくなって枯れてしまうということです」(徳島県立農林水産総合技術支援センター・病害虫担当主任研究員 渡邉崇人さん)
バラ科の桃や桜を好むクビアカツヤカミキリは樹木の表面に一度に約300個の卵を産み付けます。かえった幼虫は木の中に侵入すると2、3年は幹の中で過ごすのですが、この幼虫が樹皮のすぐ下にある栄養や水を運ぶ「道管」部分を食い荒らしてしまうのです。
「若い幼虫が樹皮のすぐ下を食べる。問題なのはここを食べられることなんです。ここで栄養を上に上げるので。1周まるまる食べられると、もうそれ以上栄養がどこにもいかないので終わるんですよね」(渡邉崇人さん)
桃がよくなる木に卵を産む
さらに困ったことがあります。クビアカツヤカミキリは卵からかえった幼虫が木の中へ侵入しやすいように表面が少しひび割れた木を好んで産卵するのですが、そういう木はたいてい桃がよくなる古い木が多いため、農家は困り果てています。
「だいたい15年以上の木がほとんど。収穫を前にして良い桃ができない」(桃農家)
「収穫の量が全然違う」
Q.収穫はどれくらいに?
「半分以下やね。こういうふうに被害が出るのはつらいね」
水分や養分を取ることができず実がならなくなってしまった木は、伐採するしかありません。おかげで桃園は切り株だらけです。
「カミキリに関してはギブアップ、お手上げ」
生息域は大阪にも
クビアカツヤカミキリは中国などから輸入されてくる木製の梱包材などの中に潜み国内に入ったとみられています。その生息地は今や日本中に広がっていて5年前に愛知県で初めて発見されて以降、その被害が全国で報告されています。その後も生息域は急速に広がり続けていて、遂に大阪でも…2015年、大阪狭山市や堺市などの公園で桜の木に幼虫が寄生しているのが確認されました。
「桜の木くずなんですが、(桜の木を)食べたクビアカツヤカミキリの幼虫のフンがこういった(木くずを固めたのような)ものになります。ひょっとしたらこれがクビアカツヤカミキリの影響かなと」(大阪狭山市都市整備部公園緑地グループ 赤阪幸司さん)
花見ができなくなってしまう?
もし私たちがどこかの公園でクビアカツヤカミキリに遭遇したら、どう対処すればいいのでしょうか?
「成虫がいたら網でとって処分していただきたいんですけど、そこが市の公園だったら市の方にご相談いただいて、どう対応いたしましょうかと言っていただけたら市の方で対応させてもらいますので」(赤阪幸司さん)
大阪狭山市ではまだ木が枯れるなどの被害報告はありませんがこのままの状態を放っておくと近い将来、桜の花見ができなくなってしまう可能性もあるといいます。
「特に増えてきたのは今年の春くらい。今いろいろ防除の方法を考えているところです。特に桜というのは日本の皆さん大好きですし、大阪狭山市としても桜を大事にしていこうという思いはあるので、(桜を)守っていこうとは思ってます」(赤阪幸司さん)
手探りの状態続く
再び、桃農家が大きな被害を受けている徳島県板野町。この日、桃園には大勢の住民や学生などの姿がありました。
Q.これは何をしている?
「桃の園地の中に出たカミキリムシの成虫をボランティアの方に捕えてもらっている。(捕らえたのは)1か月弱で1200匹ですね」(徳島県立農林水産総合技術支援センター・病害虫担当主任研究員 渡邉崇人さん)
町では毎日のようにボランティアが集まって、クビアカツヤカミキリを捕まえています。研究所へ持ち帰って新たな殺虫剤などの開発をするためです。
「去年から幼虫に対する殺虫剤の試験を始めて、それを使って木の中に入った幼虫を殺して、なんとか被害を止める。罠を設置して成虫を一網打尽にしようという計画があるんですけど、その研究を始めたところです」(渡邉崇人さん)
もはや、対策待ったなしの新たな外来種。環境省は 9月初旬までには「特定外来生物」に指定して広がりを食い止めようとしていますが効果的な駆除方法はいまだなく、手探りの状態が続いています。
Posted by jun at 2017年08月07日 10:42 in 外来生物問題