タヌキやアライグマとよく似たジャコウネコ科の動物・ハクビシンが、都会で勢力を急拡大している。生ごみを荒らされたり、天井裏にすみ着かれて悪臭やフン害に苦しめられたりと、被害も多発。だが、都市環境に抜群の適応力を持った彼らを追い出すのは簡単ではなさそうだ。
●相談、1年で444件
2年前の秋。記者が深夜、自宅(東京都新宿区)近くの住宅街を歩いていると「キューン、キューン」と声を上げながら電線の上を行き来する小動物に出くわした。暗くて姿はよく見えない。子猫が下りられなくなったのかと思い、近くの交番に助けを求めたら、警察官は一目で「ハクビシンですね」。2人でしばらく眺めていると、電柱から民家の屋根に飛び降り、どこかへ去って行った。
数十年前まで、ハクビシンは里山でもめったに見かけない動物で、天然記念物に指定していた自治体もあった。しかしここ10年ほどで急増し、農作物の被害額は「特定外来生物」として駆除が認められているアライグマを上回る。
特に都市部への進出は、アライグマより目立っている。害虫・害獣対策の業界団体「日本ペストコントロール協会」によると、2014年の都内のハクビシンに関する相談件数は444件で、シロアリ(236件)やカラスなどの鳥類(400件)より多い。生態に詳しい埼玉県農業技術研究センターの古谷益朗(ますお)さんは「アライグマは人家近くに高い木が残る丘陵地を好むが、ハクビシンは都会の方が快適らしい」と話す。
ハクビシンが都会で暮らせるのは、雑食性であるのに加え、高い運動能力により、地面に下りる危険を冒さず屋根や電線を伝って移動できるからだ。さらに、格好のすみかになる住宅の天井裏も多い。同協会の谷川力・技術委員長は「空き家や物音に気付きにくい1人暮らしの高齢者宅が増えていることも、ハクビシンの進出に関係しているのでは」と指摘する。
都内では13年調査で住宅全体の1割超に当たる約82万戸が空き家。特に数が多い23区北部や西部、八王子市、町田市などは、ハクビシンの相談件数も多い傾向がある。
●衛生面に問題
心配されるのが衛生面の問題だ。ハクビシンとヒトに共通する病気で高熱などが出る「レプトスピラ症」は、病原菌を持つ個体の尿に触れるだけで感染の恐れがあるため、駆除や清掃の際は注意が要る。酪農学園大などの調査では、関東地方や京都府内で捕獲した約半数からE型肝炎ウイルスが見つかった。都会にはなかった病原菌や寄生虫が持ち込まれるリスクが高まっている。【清水健二】
Posted by jun at 2015年11月25日 14:30 in 外来生物問題