絶滅危惧種で国の天然記念物に指定されている「イタセンパラ」。岐阜県水産研究所(各務原市川島笠田町)が2012年度から保護事業を手がけ、昨年は木曽川へ放流するために必要とされる1000匹のラインを超える繁殖に成功した。今年度はさらに繁殖しやすい環境の研究に取り組み、繁殖個体の野生復帰に向けた土台作りが着々と進んでいる。【道永竜命】
イタセンパラは河川敷の「湾処(わんど)」と呼ばれるほぼ流れのない場所に生息する。しかし、護岸整備で湾処が減少したことや外来種の増加、密漁などで個体数が減少。国内での生息は木曽川と大阪府の淀川水系、富山平野に限られている。
県自然環境保全課によると、木曽川のイタセンパラは1994年に確認されたのを最後に絶滅したと考えられてきたが、08年の「河川水辺の国勢調査」などで羽島市と愛知県一宮市の木曽川の両岸で生息が再確認され、保護の機運が高まった。木曽川では現在も局所的に生息していることが確認されている。
一方で、生息域内の保全対策だけで絶滅を回避するのは難しく、県は12年度から生息域外での保全対策に着手。県水産研究所に人工池(約150平方メートル)を作り、湾処と似た環境を整備してイタセンパラの飼育や繁殖技術の確立を目指し研究を続けている。
県水産研は14年5月、繁殖に初めて成功。イタセンパラは二枚貝の「イシガイ」の中に卵を産み付けるため、人工池にイシガイを固定するなどの工夫を重ね、親魚50匹に対し、最終的には1201匹の成魚が誕生した。今年は親魚80匹に対し、約400匹の成魚が産まれた。繁殖に最適なイシガイとの同居期間を探る試験を繰り返したため、ふ化したイタセンパラの数は14年に比べ少なくなったが、1週間の同居が最も繁殖に適していることを突き止めた。
今月15日からは来年に向けた繁殖作業が始まった。今回は人工池の半面で増殖に取り組み、もう半面では繁殖に最適な雌雄比率を探る研究に乗り出す。県水産研の各務博人・部長研究員兼生態環境部長は「繁殖に関する知見は蓄えられてきた。野生復帰に向けた準備は整いつつある」と話す。
ただ、実際にイタセンパラを野生に放流するためには外来種による食害や密漁の防止、護岸整備で失われた湾処の回復など乗り越えるべき課題も多い。加えて、市民らの保全意識の高まりも必要不可欠だ。
生息域の一つ羽島市ではこれまでイタセンパラに関する市民講座を開くなどし、今年8月からは市立図書館で県水産研で繁殖したイタセンパラを展示している。より多くの地元住民に知ってもらうことが狙いで、展示期間は12月上旬までと異例の長さだ。市教育委員会では「特に子どもたちに見てもらいたい」と話し、来場を呼び掛けている。
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◇イタセンパラ
コイ科でタナゴの仲間に分類される淡水魚の一種で日本固有種。成魚は全長10センチほど。秋にイシガイなどの二枚貝に産卵し、冬を経て春にふ化する。1974年に国の天然記念物に指定された。環境省レッドリストで絶滅危惧種1A類に指定されている。
Posted by jun at 2015年10月01日 08:56 in 魚&水棲生物, 自然環境関連