2015年05月12日

<みどりの日>奄美・琉球「生物多様性」に迫る脅威

 ◇クロウサギに新たな天敵 野生ネコ対策急ぐ
 400種を超えるサンゴに、世界的にも珍しい亜熱帯雨林。そして、そこに息づく多種多様な生き物たち。日本の面積の1%にも満たない場所に育まれた濃密な生物多様性は、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが潜り込む海域で、大陸と地続きになったり離れたりを繰り返した複雑な地史のたまものだ。「奄美・琉球」について政府は2017年の世界自然遺産登録を目指すが、島々は今、外来種の侵入など新たな課題に直面している。【河内敏康、阿部周一】

 4月17日深夜、国の特別天然記念物のアマミノクロウサギを探して鹿児島県の奄美大島の山林で車を走らせた。道路脇の草むらが突然動き出した。

 「ネコがクロウサギを襲っている」

 ガイドで写真家の常田守さん(56)が車を止めてそう叫んだ。その直後、目をぎらつかせたネコが道路に飛び出し、アマミノクロウサギが森の方へと逃げ去った。この日だけで3度もネコに遭遇した。

 奄美大島では、希少動物を襲うマングースが、国などの防除事業によって減少した。その結果、今度は野生化したノネコが問題になっている。

 特に懸念されるのがアマミノクロウサギへの影響だ。独特な短い耳と後ろ脚を持ち、丸みを帯びた愛くるしい姿をしている。国は正確な生息数を把握していないが、奄美大島に5000匹、徳之島に200匹いると推定されている。

 京都大と森林総合研究所との共同研究によると、ネコがアマミノクロウサギを年44匹食べていると仮定すると、最短で奄美大島で百数十年、徳之島で数年で絶滅すると推計される。日本哺乳類学会は今年1月、ノネコを緊急に捕獲して排除するよう国と鹿児島県に要望した。

 奄美大島の5市町村は、11年、飼いネコが野生化するのを防ごうと条例を施行し、市町村への登録を義務化すると共に、どのネコが飼いネコか分かるようマイクロチップを埋め込んだり、繁殖を防ぐ避妊手術をしたりするよう勧めている。国もノネコの問題をまとめたチラシを作製し、啓発している。

 だが、奄美市の獣医師、伊藤圭子さん(37)は「条例には罰則がない。マイクロチップの埋め込みや避妊手術を推奨しているが、お金がかかるため飼い主がどこまで行うのか疑問だ。行政がリーダーシップを取って管理をもっと強化させる必要がある」と指摘する。同市など5市町村は昨年末から、飼いネコのさらなる管理強化に向けた協議を始めた。

×  ×

 他にも課題は多い。

 奄美大島では、道路整備に伴い、希少動物が車にはねられる事故が相次いでいる。環境省によると、アマミノクロウサギだけで、過去14年間で131匹が死んだ。希少植物の盗採も相次いでいる。奄美市はクロウサギの事故死を防ぐ啓発用の看板を林道に置いた。盗採を防止するため山林に監視カメラを設置し、臨時職員を雇って毎月延べ2週間ほど見回りしている。

 同市環境対策課は「市民や観光客らを啓発し、クロウサギの交通事故死を防ぎたい。盗採についても、他の自治体の協力を得ながらパトロールなどの取り組みを島全域に広げたい」と話す。

 世界自然遺産登録後に観光客が島に押し寄せ、自然破壊が進むのではないかと懸念する声もある。

 希少種のカエルを観察するため、4月19日に山に入った。土砂降りの雨の中、車を走らせていると、林道のいたるところに県指定の天然記念物で、黄緑色に黒褐色の斑点が美しいアマミイシカワガエルや、背中が黄褐色のオットンガエルが出ていた。ガイドの常田さんは「知識のない人たちが車で押し寄せれば、希少な生き物が踏みつぶされてしまう。何らかの規制が必要ではないか」と懸念する。

 環境省奄美自然保護官事務所の鈴木祥之・上席自然保護官は「世界遺産地域のうち、重要地域ではガイドの同行を義務づけるなど、自然に配慮した観光のあり方についてもさらに議論していきたい」と話す。

+Yahoo!ニュース-国内-毎日新聞

Posted by jun at 2015年05月12日 11:05 in 外来生物問題, 自然環境関連

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