環境省は先月末、亜種ヤエヤマイシガメを含む、ミナミイシガメについて、輸出を禁止する方針を固め、パブリックコメントの募集を開始した。ヤエヤマイシガメは、八重山諸島などに分布する日本固有亜種で、食用、ペット用として中国で人気があるとのこと。輸出が禁止されると、ワシントン条約に基づく国内陸上動物の輸出規制としては、初めての例となる。(カルピス株式会社 人事・総務部=坂本 優)
ヤエヤマイシガメ(を含むミナミイシガメ)は、日本固有種のカメ、ニホンイシガメなどとともに、2013年3月の第16回ワシントン条約締約国会議において、付属書IIに記載された。付属書II記載の動植物はただちに絶滅のおそれのある種ではないが、取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれが生じかねないもので、輸出入には輸出国の許可が必要となる。
環境省が最近行った調査では、自然分布域における推定個体数は、33000個体。これに対して2013年8月以降の輸出数は6000個体で、種の存続を脅かす過剰な利用と判断された。これが、輸出規制に乗り出したきっかけである。
ニホンイシガメの状況も決して楽観はできない。ニホンイシガメといえば、長らく、日本中の祭りや縁日でおなじみだったカメで、私自身も中学生の頃まで飼っていた。元々の野生の個体か、飼育下から逃げた個体かわからないが、笛吹川の支流で子供同士、小魚を捕っているとき、時に捕まえることもある、大変身近な生きものだった。
アカミミガメは、眼の後ろに赤い模様があることが名前の由来。程度は個体により、まったくないものもある。今年4月下旬に根津神社で撮影
最近都内の川や池で甲羅干しをしているカメをよく見かけるが、私が観察する範囲では、多くが、江戸時代以降に大陸から持ち込まれたとも言われるクサガメか、外来種のアカミミガメ、そして私には種類はわからないものの、少なくもイシガメではなさそうなカメで、記憶に残っているようなイシガメを見ることは滅多にない。雑種も増えているという。
ちなみに、ニホンイシガメの付属書IIへの掲載にあたっては、以下のように解説されている。生息地の自然環境の改変の他、ペットとして捕獲され続け、外来種のアカミミガメ(Trachemys)に生息地を奪われ減少している状況が端的に述べられている。
Mauremys japonica Endemic to Japan; widespread, known from Honshu, Shikoku, Kyushu and several smaller islands. Although often found at high density, many populations are thought to be depleted or in decline, mainly because of land-use changes, also affected by collection for pets and competition with the introduced Trachemys. Assessed by IUCN in 2000 as Lower Risk/near threatened.
アカミミガメといえば、日本へ大量に持ち込まれた「きっかけ」の一つを私たちの世代(アラカン)は知っている。それは、お菓子の景品として日本中に頒布された。コマーシャルや少年誌の広告で「アマゾンの緑ガメ」(実際は北米産)として紹介され、金魚鉢(?)の中を泳いでいた可愛い姿(のイメージ)が脳裏に残っている。
それが金魚鉢にはおさまらない大きさに育ち、飼いきれなくなって捨てられ、あるいは神社の池などに「放生」され、全国に分布を広げた。今にして思えば、生きているカメを販促景品として使うこと自体に違和感があるが、当時の私にそのような感覚はなく、一度ならず応募した。
もし、当選していたならば、私自身、飼いきれなくなったアカミミガメを、近所の川に放したであろうことは間違いない。あるいは、比較的水温の高そうな石和温泉街の川まで運んだだろうか。川辺に捨てておきながら何ら罪悪感なく、むしろ内心、昔話に出てくるような「カメの恩返し」を期待しつつ、カメの幸運を祈っている自分の姿が想像できる。
頒布されたカメは特定の亜種が多かったとも聞く。日本で繁殖しているアカミミガメの遺伝的系統を調べれば、その痕跡は残っているのだろう。あるいは、痕跡どころか、「アマゾンの緑ガメ」として持ち込まれた第一世代の少なからぬ個体が、今も生き延びて子孫を殖やし続けているかも知れない。
その一方で、ニホンイシガメは一昨年から付属書IIに記載されている。もちろん、アカミミガメには何の罪も責任もないことであるが。
カルピス株式会社 人事・総務部 坂本 優
<バルディーズ研究会通信 158号から一部抜粋加筆>
坂本 優(さかもと・まさる):カルピス株式会社 人事・総務部
東京大学卒業後、1979年味の素入社。本社にて法務・総務業務、工場・支社にて総務業務を担当。2011年カルピス株式会社へ出向。法務グループリーダーとして法務・商標・コンプライアンスを担当。2012年、同社転籍。2013年定年以降も、雇用延長制度により法務業務を継続中。学生時代、「動物の科学研究会」に参加、味の素東海事業所在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設するなど、生きものを通した環境問題にも通じる。(趣味ラグビー 関東ラグビー協会理事)