2014年11月10日

<セアカゴケグモ>「暖かい場所」に注意 35都府県に拡散

 ◇荷物に付き各地へ拡散/強毒、子供らは重症化も/箸でつまみ、踏んで駆除
 オーストラリア原産で、毒を持つ「セアカゴケグモ」が国内で生息域を広げている。今年9月末には東京都内で初めて見つかり、これで南は沖縄から北は岩手まで全国35都府県で確認されたことになる。かまれる被害も相次ぐやっかいなクモはどこに潜み、遭遇したらどう対処すればいいのか。【樋口淳也】

 「最も特徴的なのは、体全体が真っ黒で、背中部分に真っ赤な矢印のような模様があるところ。こうした見た目を持つクモは他に国内にはいないので、比較的分かりやすいですよ」。セアカゴケグモの見分け方を説明するのは、国立環境研究所生物・生態系環境研究センター主席研究員の五箇(ごか)公一さんだ。セアカゴケグモは、体が大きい雌でも体長1〜1・5センチ程度とあまり大きくなく、赤い矢印がある体の部分は丸い。「ゴキブリのように素早い動きもしません」というから、それほど脅威を感じない気もするが、注意すべきはその毒だ。「セアカゴケグモが持つのは『α−ラトロトキシン』という神経毒です。毒性は非常に強く、(量でなく)成分としてはキングコブラよりも強い」

 国内では1995年に大阪府高石市で初めて見つかった。国は、人の命に関わる被害があるとして特定外来生物に指定し、生きたまま持ち込んだり飼育したりすることを禁じているにもかかわらず、その拡大は止まらない。西日本から東日本へと広がり、昨年は岩手、福島、千葉の各県で初めて確認され、今年に入ってからは金沢市や東京都三鷹市、江東区などで発見が相次いでいる。

 元大阪府立公衆衛生研究所主任研究員でセアカゴケグモを追跡調査してきた、いきもの研究社代表の吉田政弘さんは「セアカゴケグモが複数の場所や数十匹見つかっているような地域では、すでに繁殖が始まっていると見ていい。直径1センチほどの卵のうと呼ばれる袋の中に一度に200〜250個の卵を産み付け、一気に増えていきます」と話す。

 車や資材、引っ越しの荷物などともに移動しているとみられ、高速道路のサービスエリアなどで見つかるケースが多いのも、車にくっついて移動したセアカゴケグモがすみ着いたためなどと考えられている。ここ数年、東日本や北陸地方に広がっている理由について五箇さんは「東日本大震災以降、被災地に各地から物資や資材が送られていることや、北陸新幹線の開業に向けた工事の影響もあるのではないか」と分析する。

 セアカゴケグモにかまれると、どんな症状がでるのか。五箇さんは「かまれるとハチに刺されたように激しく痛み、その部分が腫れることもありますが、1匹が持つ毒の量が少なく、健康な成人であればその程度で済むことが多い。しかし、子供や高齢者ら体力がない人がかまれると発汗や発熱、場合によっては嘔吐(おうと)や下痢、筋肉のけいれんを起こし、重症化する恐れがあります」と解説する。セアカゴケグモの毒が体内に入ると血圧が急上昇するとの報告もあるといい、五箇さんは「高血圧の人も気をつけなければいけない」と注意を促す。

 環境省によると、国内でセアカゴケグモにかまれて死亡した事例はない。ほとんどは軽症で、数時間から数日で症状は軽くなるという。とはいえ重症化の恐れもあるので、同省は「かまれたら速やかに医療機関に相談してほしい。その際、可能ならば種類特定のためにクモを殺して持参して」(外来生物対策室)と呼びかける。

 五箇さんは「痛みや腫れをやわらげるため氷で冷やすなどの方法もありますが、基本的には症状が治まるのを待つしかありません。症状が重くなりそうな場合には、医師の判断で抗毒素血清を使って治療をすることになるでしょう」と話す。

 そんなセアカゴケグモはどこにいるのか。吉田さんがキーワードとして挙げるのは「暖かい場所」だ。「都市化した現代社会では、冬でも暖かい場所はいたるところにあります。例えば、道路脇の雨水溝は、日当たりや下水の発酵などで暖かい。他に自動販売機やエアコンの室外機などもセアカゴケグモが好む場所です」。実際、こうした場所で被害は起きている。さらに、ベランダや庭での作業にも注意が必要だ。「外に置いてあったサンダルに足を入れたらかまれた、プランターをいじっていたら手をかまれたというケースもあります。クモが潜んでいそうなくぼみや穴、ものの裏側などに気をつけなければいけません」

 吉田さんがセアカゴケグモを発見するヒントを教えてくれた。「クモの巣です。地面の近くに不規則な巣を張ることが多く、糸に強度があるので、落ち葉やたばこの吸い殻などが引っかかっていることがある。そんな巣を見かけたら要注意ですね」

 実際に見つけたら、どう対処すればいいのか。五箇さんは「外来種なので、放っておくと増えてしまいます。例えば箸でつまんで捕まえ、靴を履いた足で踏みつぶすなどの方法で駆除するのが簡単で有効です」と言う。殺虫剤も有効だが、うまく薬剤がかからず逃げることもあるため、こうした方法が確実なのだという。「セアカゴケグモは普段はおとなしいが『攻撃を受けた』と感じれば、その牙で毒を注入しようとします。ですから素手で触ってはいけません。もし触ってしまう可能性があるのなら、予防策として必ず手袋をしましょう。牙は非常に短いので、ゴム手袋などで十分です」

 環境省は、同じヒメグモ科に属し同等の毒を持つハイイロゴケグモについても、西日本を中心に13府県で確認されているとして注意を呼びかけている。

 ヒトやモノの動きが活発化し、都市化が進めば進むほど、毒グモのリスクはより身近なものになっていくと言えそうだ。

+Yahoo!ニュース-社会-毎日新聞

Posted by jun at 2014年11月10日 13:39 in 外来生物問題

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