ビル敷地内で、外来種を植樹するなど本来の自然環境の再生とはほど遠い状況が目立つとして、産学でつくる協議会が、生物多様性に配慮した指標を策定、認証する制度を始めた。都会の新たな魅力づくりとして注目されそうだ。
1990年代以降、都市部を中心に癒やし効果を求めて、敷地内に庭などを配置するビルが増えた。一方で、外国産の街路樹の植樹などの問題が指摘されていた。
そこで、昨年12月、大手不動産会社や学識者で作る「いきもの共生事業推進協議会」が発足。環境省の考え方も参考に今年2月、緑地面積▽在来種の使用▽モニタリングの実施−−などの指標を点数化する指標を策定し、5割以上を獲得したビルを認証することにした。これまでに東京、横浜市、名古屋市などで11件を認証した。
このうち、三菱地所が、東京都千代田区で手掛けるプロジェクトでは、約2800平方メートルの敷地に樹木や鳥のための水場を配置する。皇居の林を参考にして在来種約75種の樹木を選定し、虫が蜜を吸える植物も積極的に植える。水場では、動物に配慮して従来の塩素殺菌ではなく紫外線にしたり、生き物がすめる隙間(すきま)を設けたりする。緑化面積は空地の約半分に達する。完成後(2016年度予定)は、指標となる動植物をモニタリングする。
他にも、東京メトロ・大手町駅(東京都千代田区)に直結し、東京建物などが建設した大手町タワーも同様の手法で、約3600平方メートルの「大手町の森」を整備した。
協議会の代表理事を務める中静透・東北大教授(植物生態学)は「東京であれば皇居や日比谷公園など周辺の自然との調和が取れ、動植物の生息域が拡大する」と期待。三菱地所環境・CSR推進部の竹内和也副長は「多様な動植物がすむビルは魅力の一つ。世界的に重要性が認識されている生物多様性に貢献していきたい」と話す。【渡辺諒】
◇生物多様性
種や遺伝子などのレベルで多様な生物が存在している状態。地球上には知られているだけで約175万種、未発見も含め約3000万種が存在すると推測される。しかし近年、都市開発などの影響で急速に数や生息域を減らしている。2010年に名古屋市で開かれた国連生物多様性条約第10回締約国会議で、20年までに生物多様性の損失を食い止めるため、効果的で緊急に行動するという国際目標が採択された。
◇生物多様性に配慮したビルの主な指標
・在来種の植樹を推奨し、花や実のなる樹木を植える
・外来種の侵入防止対策
・ひとかたまりの緑地の面積
・周辺の自然環境や土地の成り立ちとの調和
・土壌の厚さの確保
・殺虫剤や化学肥料などの使用状況の把握
・間伐材のベンチや垣根への利用
・モニタリングの実施
※いきもの共生事業推進協議会の資料を基に作成。
Posted by jun at 2014年07月24日 08:28 in 外来生物問題, 自然環境関連