◇官民一体で活動−−白山国立公園
石川、富山、福井、岐阜の4県にまたがる白山国立公園で先月末、高山植物コマクサの除去作業が行われた。「高山植物の女王」とも呼ばれ、人気のある品種だが、白山には本来生息しておらず、乗鞍岳から持ち込まれた“外来種”と判明したためだ。白山は全国で唯一、国の事業として植物を対象に外来種除去事業を実施。生態系保全のために進められる外来種の判定や、除去の取り組みを取材した。【横田美晴】
◆データで判定
コマクサはケシ科の多年草で、北アルプス(長野県など)や知床連山(北海道)などに分布。ピンク色の美しい花を咲かせるため人気がある品種だ。環境省白山自然保護官事務所によると、92年に白山でコマクサの生育を確認した。
同事務所は、白山の自然環境では本来、生育しないとみられたため、監視にとどめて生息数の確認を続けてきた。その結果、93年には109個体、2001年には1780個体、09年には4929個体と、予想を上回り着実に増加していることが分かった。
生態系への影響を考え、昨年度に有識者らによる検討会を開き、対策を検討した。その結果、1822年以降の白山の植物についての主要文献を調べると、コマクサが自生しているという記録はなかった▽同事務所が初めて確認した際、「(岐阜、長野両県にまたがる)乗鞍岳のコマクサを1973年ごろに持ち込んで植えた」という証言があった▽DNA解析で、白山のコマクサのDNA配列が乗鞍岳のものと一致した−−ことなどが確認され、「外来種」と判定した。
◆盛んな活動
白山一帯ではコマクサが問題化する以前から、白山市や民間団体などで構成する「環白山保護利用管理協会」などが、外来種の除去作業を行っている。同協会や石川県は、03年までに行った調査で、白山の高山帯には本来生育していない低地性植物のオオバコやスズメノカタビラの“侵攻”を確認。翌年から、一般に除去作業を行うボランティアを募集し、除去を続けている。
また毎年、同協会などは外来種除去のイベントを実施。今年6月には、白山の市ノ瀬で約100人、同8月には室堂で1泊2日の日程の作業に約50人が参加した。石川県白山自然保護センターによると、オオバコなどの植物が地表に出た部分をハサミで刈りとることを繰り返す単調で地味な作業だが、参加者は年々、増えているという。同センターは「行政だけではとても手が足りず、貴重な力になっている」と話す。
◆全国に先駆け
外来種を巡っては近年、一部の自然公園でシカによる食害などが問題化。対策のため環境省は昨年、自然公園法の改正とともに、「生態系維持回復事業」を始めた。同事業は、生態系への人為的な影響を監視するだけではなく、回復に向けて積極的な措置を取る。
同事業は最初に、知床国立公園(北海道)などのシカ駆除を対象とした。そして今年1月には、白山の外来種の除去活動も植物として初めて選ばれた。
環境省国立公園課は、「白山一帯のように官民一体で取り組む体勢が整っているのは、他の自治体には例がない」と評価する。
外来種の植物が侵入するのは、コマクサのように「花がきれいだから」と意図的に持ち込まれるほか、登山者の衣服に付いた種子が落ちる場合などが考えられるという。除去作業を行っても、侵入が繰り返される可能性は常にある。同センターの吉本敦子さんは、「一般の人がゼッケンを着けて作業をする姿を見て声をかけてくる人は多い。ボランティアを通じて『自分も気を付けよう』という意識が広まることを期待している」と話した。10月3日朝刊