本島で絶滅し、本島北部のダム湖で復元への取り組みが続くリュウキュウアユが、名護市東海岸の大浦川で度々確認されている。昨年夏の調査では、10匹を確認。海と川を行き来する生態的特徴をもつが、専門家は、約30キロ離れた東村の福地ダムから下流域へ流れ出たふ化直後の仔魚(しぎょ)が海に出て流れ着いたとみており、河川への定着や、アユがすめる川づくりへ期待が高まっている。
米軍普天間飛行場代替施設建設の現行案で一部埋め立て計画のある大浦湾に注がれる大浦川の生物多様性の高さを評価する声もある。
リュウキュウアユは両側回遊魚(りょうそくかいゆうぎょ)と呼ばれ、11月から翌2月までに産卵し、約2週間でふ化した後に海へ下り、2、3カ月を海岸で過ごした後に川をさかのぼる。ダム建設や河川開発などで河口周辺の海岸環境が悪化し、沖縄本島では1978年の採集を最後に姿を消した。
92年から奄美大島産の稚魚を福地ダム、安波ダム、辺野喜ダムに放流し、ダム湖とその上流河川を行き来させる「陸封化」で復元。河川では過去に源河川や奥川などで稚魚放流を試みたが、定着には至っていない。
琉球大学理学部の立原一憲准教授(魚類学)によると、絶滅以前の70年代までに大浦川で生息記録はない。だが2009年7月の調査で、大浦川でリュウキュウアユが10匹確認された。同准教授は「大浦川では以前から何度か確認されており(ダム下流の水量を保つための)放流で下流に流出した個体の一部が流れ着いたと考えられる」と話した。
ラッパ状に大きく切れ込んだ大浦湾に流れ込む大浦川は、河口にマングローブや干潟、砂浜など多様な環境が広がっているのが特徴で、立原准教授は「河口に護岸が少なく、自然河川に近い状態で保たれており、生物多様性も高い」とその環境を評価する。一方で、中流域に砂防ダムがあり、アユが上流まで上れない現状もあり、魚道整備などの必要性も強調。「アユがすめる川になればほかの生き物もすめる」と河川での定着に期待を込めた。
「リュウキュウアユを蘇生させる会」会長の諸喜田茂充琉球大名誉教授は「アユの生息条件を満たすことが必要。ダム湖で定着しつつある稚魚が、周辺の川に広がってほしい」と話した。(慶田城七瀬)
<用語>リュウキュウアユ
沖縄本島と奄美大島に生息し、本土産アユと遺伝的に異なる琉球列島の固有亜種。成魚で体長10〜18センチになる。レッドデータおきなわでは絶滅した種に区分される。3ダム湖に合計1万9610匹の稚魚が放流され、北部ダム事務所が1992年から2005年まで実施した8月期の調査では3ダム合計平均で1万6329匹が確認されている。琉球大の立原一憲准教授の研究室が09年7月に福地ダムで実施した調査では、2万5901匹と同ダムの過去最多個体数を記録した。