環境省が本島北部の山林で実施しているマングース防除のための生け捕りわなに今年4月、国指定天然記念物で絶滅危惧(きぐ)種のオキナワトゲネズミ1匹が捕獲され、外来種のクマネズミと誤って識別され、殺処分されていたことが28日までに分かった。同省は作業員が識別できなかったことや、わなの中が暗かったことを原因に挙げ、専門家は慎重な識別を促している。
やんばるの森だけにすむオキナワトゲネズミは、森林伐採や林道建設で生息地が減少・分断され激減し、野生化したネコの糞から毛が見つかるなど絶滅が懸念される種。2008年に30年ぶりに5匹捕獲されたが、生息状況や詳しい生態はほとんど分かっていない。
マングース防除の作業員が今年4月、わなにネズミがかかっているのを発見し、国頭村の同省やんばる野生生物保護センターに搬送した。作業員はクマネズミと判断し、二酸化炭素で安楽死処理した。わなから取り出したところ、トゲネズミの雌の成獣と分かった。
県が作成したレッドデータおきなわによると、トゲネズミは背面が黄褐色で、幅広い先のとがったとげ状の毛を持つ。とげ状の毛以外はクマネズミと類似しているという。
同省はトゲネズミについて生息調査がほとんど実施されていないことから、今回の事故発生以前にも作業員に対し混獲の可能性が高いことを周知していた。今回の事態を受けて再発防止策として識別体制を単独ではなく3人以上で行うことや、わなの中を見えやすくする対策を取るほか、作業員への注意喚起と識別能力向上に努めているという。
環境省那覇自然環境事務所は「写真で判別できてもトゲネズミの実物を見たことがある人はほとんどいない。実物は見分けがつきにくかったのではないか」と推測した。
沖縄国際大学の宮城邦治教授(動物生態学)は「トゲネズミだけでなく、アカヒゲやヤマガメなど在来の希少種が偶発的にわなにかかるのは承知済みのはず。希少種を脅かすマングースの防除はやらざるを得ないが、捕獲にかかわる人たちは種を同定できるようしっかり訓練すべき」と話した。(慶田城七瀬)
<用語>マングース防除事業
マングースは、本島北部の森にすむヤンバルクイナなど固有種の生態系に影響を及ぼすとして特定外来種で防除の対象。防除事業は、県が2000年度、環境省が01年度に開始。10年計画で根絶を目指している。開始以降9720頭が捕獲され、09年度は9月までに94頭が捕獲されている。