2009年08月21日

<小笠原諸島>「世界遺産」へ外来種の壁…駆除作戦続く

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に推薦される東京都の小笠原諸島。希少生物が多く「東洋のガラパゴス」と呼ばれるが、外来種の動植物がすみつき、登録の壁となっている。政府が推薦書類を仮提出する来月をにらみ、島では駆除作戦が続く。世界遺産に登録される勝算は?【下桐実雅子】

 「思いのほか、捕れるな」。財団法人・自然環境研究センターの戸田光彦主席研究員がつぶやいた。木の幹に市販のゴキブリ捕獲器をくくりつけると、米国産トカゲ「グリーンアノール」が捕まった。オガサワラシジミなどの希少種を食い荒らす厄介者だ。戸田さんは設置しやすいよう改良した「アノールトラップ」を開発。父島に05年末から設置し、5000匹以上を捕獲した。現在の推定生息数は全域で数百万匹。根絶は遠い。

 植物の外来種の代表格は、薪(まき)の材料となる「アカギ」。東南アジアなど原産で、在来の樹木より大きく、森を専有して在来植物との共存を拒む。農薬を注入して枯らす作戦を続け、弟島で06年に根絶した。西島では海鳥を捕食する東南アジア原産のクマネズミを捕獲、08年に根絶を確認した。

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 都心から1000キロ離れた小笠原諸島は、大陸と陸続きになったことがない。大河内勇・森林総合研究所理事は「ガラパゴスと同様、海で隔てられた小笠原の生物は強敵に出合ったことがなく、外来種に弱い」と話す。外来種の到来は人が定住し始めた1830年ごろ。アカギのほか、畜産用に豚やヤギが持ち込まれた。グリーンアノールは米軍統治下の1960〜70年代に定着したとされる。

 問題は、外来種をやみくもに根絶すればよいわけではない点だ。媒(なこうど)島などでは、植物を食べ尽くすノヤギを駆除すると、ノヤギが食べていた外来植物ギンネムが増えてしまった。

 環境省は「外来種をすべて駆除するのは難しい。拡散を防ぐことも重要だ」と指摘。母島で下船時に靴底の泥を落とすよう呼びかけ、侵入防止を図る。

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 そもそも政府が世界遺産登録の推薦に踏み切る理由は、小笠原の固有種の多さだ。昆虫は1406種確認され、25%を固有種が占める。また日本には約800種のカタツムリがいるが、小笠原は固有のカタツムリが約100種いる。千葉聡・東北大准教授は「小笠原は種の分化が速く、進化の過程を観察できる」と話す。

 世界遺産は890件を数え、ユネスコは審査を厳しくしている。岩手県の平泉や東京の国立西洋美術館の登録も見送られた。政府が小笠原諸島を推薦するのは来年1月で、結論は11年夏に出る見込み。環境省は「小笠原の自然は世界に誇れる。価値を科学的に説明し、突破したい」と自信をのぞかせる。

+Yahoo!ニュース-社会-毎日新聞

Posted by jun at 2009年08月21日 12:11 in 外来生物問題, 自然環境関連

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